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111D36で初めてCNSループスの出題がありました
【111D36】
27歳の女性。発熱と顔面の紅斑との精密検査のため4日前から入院中である。3か月前から手指の関節痛を自覚していた。1か月前から顔面の紅斑と37℃台の発熱も出現したため受診した。来院時、意識は清明。体温37.5℃。脈拍84/分、整。血圧106/72mmHg。両側類部に浮腫状の紅斑を認めた。心音と呼吸音とに異常を認めなかった。両側の手関節と肘関節とに圧痛を認めた。尿所見:蛋白(−)、潜血(−)。血液所見:赤血球405万、Hb 11.1g/dL、Ht 34%、白血球2,500(好中球70%、好酸球1%、好塩基球1%、単球4%、リンパ球24%)、血小板15万、PT-INR 1.3(基準0.9〜1.1)、APTT 38.9秒(基準対照32.2)。血液生化学所見:尿素窒素12mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、Na 140mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 108mEq/L。免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉陰性、抗核抗体1,280倍(基準20以下)、抗DNA抗体60IU/mL(基準7以下)、CH50 2U/mL(基準30〜40)、C3 32mg/dL(基準52〜112)、C4 3mg/dL(基準16〜51)。
本日から頭痛、めまい及び嘔吐が出現し、7%重炭酸ナトリウムを静脈投与されたが改善しない。意識は清明。水平眼振を認める。頭部CT(A)と頭部MRIのFLAIR像(B、C)とを別に示す。脳脊髄液所見に異常を認めない。
次に行う治療はどれか。
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a 緊急手術b 抗菌薬投与c 血漿交換療法d 分子標的薬投与e ステロイドパルス療法
CNSループスとは?
SLEに合併する中枢神経障害
SLEを原因として起こる中枢神経障害をCNSループスという。
末梢神経の障害がない場合 central nervous system lupus (CNS Lupus)という病名も用いられるが、両者の使い分けは必ずしも厳密ではない。
CNSループスの検査所見
血清の抗リポゾームP抗体、髄液のIL-6上昇を認めることがあり、診断の補助となる。末梢血中に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが検出される抗リン脂質抗体陽性例では多発脳梗塞を示すことがある (APS合併例)。
髄液での IL-6 高値が,もっとも感度が高い検査値異常であるといわれている。
CNSループスの症状
膠原病の神経病変のなかで、最も頻度が高く重篤な病態。
報告によりばらつきがあるがSLEの神経病変の出現率はSLEの10~80%。神経症状と精神症状を分けると神経症状を呈するものは20~70%、精神症状を呈するものは10~35%。
中枢神経、脊髄、末梢神経、すべて侵され、あらゆる神経症状を呈す。
しかし、SLEに特異的な症状はなく、診断、治療が困難な病態の一つである。
特に難治性病態としては意識障害、痙攣重責発作、広範囲な脳血管障害、重度の精神病などが該当。
CNSループスの死因
死亡原因の10~20%が中枢神経合併症によるものである。
CNSループスのMRI所見
・抗原抗体複合体沈着に伴う局所の血管炎
・抗リン脂質抗体、血小板、及び血管壁の相互影響に伴う二次性の血栓症
・抗原抗体反応に伴うび慢性の神経機能障害
※脳梗塞との鑑別が難しい
治療
基本的には、ステロイド(大量療法またはステロイドパルス)+免疫抑制療法
CNSループス診断確定後、速やかに副腎皮質ステロイド大量療法を行う。通常は初期投与量PSL 60mg/日投与を開始するが、急性増悪、効果不十分と判断された場合は ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン 1g/日× 3 日間)を施行する。無効例、ステロイド減量困難例 の場合はCYやAZAの経口投与を併用。AZAは主に免疫抑制剤のうちではセカンドラインの薬剤として使用される。CYは静脈内間欠投与か経口パルス療法などを行う。IVCYはステロイド抵抗性CNSループスにおいて6割に有効であったという
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